「愴」ライナーノーツ公開
会場限定シングル「愴」ライナーノーツを公開しました。
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8曲入りセカンドミニアルバムのリリースが昨年の7月。そこから約9か月の期間が経ち、今作「愴」と次作「想」の二か月連続(4月と5月)でのシングルリリースが決まった。2年前の2015年、宇都宮から上京したての彼らが、ファーストミニアルバムで見せた淡くポップな面影はどこかに消えてしまった。
サウンドは大きく変わったが、ボーカルの越雲龍馬は相変わらず神経質だし、刀川(Ba)、やんす(Gt)、ヒデキ(Dr)ら他メンバーの性格にもさほど大きな変化はない。
いったいバンドになにが起きた?
と宇都宮時代の彼らしか知らないファンの方は思うかもしれないが、それは仕方のないことだ。だって越雲を始め、pollyというバンドがものすごい勢いで成長してるのだから。
知らないものを知ろうとする探求心に飢えた越雲は、この数年でたくさんの情報から取捨選択を繰り返し、新しい表現方法を身に着けた。
赤と黒の二色しかないボールペンで絵を描いていたバンドが、いまでは12色セットの絵具を手にしてしまった結果、色を混ぜたり、濃くしたり、薄くしたり、緻密に頭のなかで描いたイメージを楽曲に落とし込むことに成功した。そんな作品が今作ではあるが、煩悩とコンプレックスの塊であるようなこのバンドにまだまだ終わりは見えない。
売れる音楽がやりたいのではない。
やりたいことをやった結果、彼らは売れたいのである。
そんなことをDaniel JohnstonのTシャツを着ている越雲の姿を見ながら思うのであった。
文:船橋徹