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 polly Release Tour「FLOWERS」
Final One Man

2020.01.31 LIVE HOUSE FEVER

—Live Report—

 

Text: yoeq / Photo: Atsuki Umeda

 

 

2019年11月6日にリリースされた3rd Mini Album「FLOWERS」
その作品名を冠したリリースツアー「FLOWERS」のツアーファイナル、2020年1月31日に行われた新代田FEVERでのワンマン公演を見た。
「FLOWERS」を携え、年をまたいで開催された14本のツアー。その集大成のファイナル、ワンマン公演で彼らはどのような花を届けることができたのだろうか。


この日の新代田FEVERは、事前に募られたファンからの花々でステージが彩られていた。
開演前、無機質であるはずのライブハウスのステージに彩りが添えられ、今日はここに来ている私たちと彼らのみのための空間であるという確信と期待を感じさせられた。

この日のpollyは、間違いなくライブを楽しんでいた。
笑顔が多かったというわけではなく、むしろメンバー全員が澄んだ表情をしていた。
彼らが彼らの音楽に集中する余裕があり、「FLOWERS」という作品への自信やツアー各公演で得た反応・手応えの大きさが、彼らの精神を研ぎ澄ませていた。
珍しく拳を突き上げながら「pollyです。よろしく」とライブを始めた越雲の姿は、この日に対する彼自身の期待の高さを感じさせた。

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ライブで映える曲といえば「アップテンポで軽快で、ノリが良い」という要素を想起するが「FLOWERS」には真っ先にそういった印象を抱くような曲はない。

しかし、今回のライブが全編ただただ静かに聴かせるものだったかというと、そうではなかった。
過去作・今作問わず楽曲のいたるところにアレンジが施されており、けして音源の再現だけではない、ライブでの「FLOWERS」、ライブでの「polly」を新たな形で披露してくれた。

音源では越雲の歌をフォーカスし、歌を包み込むように演奏やエフェクトが重ねられているが、このライブではその特性を保ちつつ、より具体的な輪郭をもった各楽器の演奏が、楽曲の新たな表情を彩っていた。

1曲目の「泣きたくなるような」は、飯村のギターが音源での上モノとしての役割よりもはっきりと越雲の歌を支えていて、音源とはまた違ったイメージの、より濃い色として捉えることができた。
続く「Plastic」は、高岩のキックの力強さが加わってビート感が増し、より"踊れる"曲に変化を遂げていた。無機質なビートの中のひとつひとつの音にニュアンスが吹き込まれ、生きた緊張感をもたらしていた。
「同じ花を見つめながら」では、須藤の情景を感じさせるベースラインの振動が体感的に伝わり、この3曲でフロアとステージの一体感を確かなものとして強めていた。

 


私がpollyを好きな理由の一つに「ライブにおいて楽曲の新旧を感じさせない」という要素がある。
過去作の曲も今のpollyの曲としてアップデートされ、その時その時に新たな印象をもって響いてくるのだ。
今回のライブでは「今のpolly」という一貫性が過去最大に強く、MCを挟んでからの「生活」、「花束」、「美しい」、そして今作から「遠く」の4曲全てが同列の存在として伝わってきた。
楽曲によって向き合うモードを変えるのではなく、あくまで今の自分たちとして楽曲を再解釈して演奏できる強みがpollyにはある。

今までは「現在進行形のバンドが現在進行形の未完成な姿を見せている」という印象も受けたが、今のpollyは現在進行形のバンドでありつつも、その時の最大限の完成形を私たちに届けてくれるバンドになったのだと思う。
彼らとしても自分たちが「過去最高のpolly」である実感があるのではないだろうか。

彼らに対するイメージのひとつに「シューゲイザー」という音楽性がある。
正直、そのイメージをぼんやりと持ちつつあまりpollyを聴いていない人も多いのではないだろうか。
越雲はMCで「そこらのシューゲイザーバンドとは違います。シューゲイザーバンドだとも思っておりません」と、そのイメージをひっくり返すような発言をしていた。
「今までのpollyだと思うなよ」と言っているようにも聞こえた。
シューゲイザーが持ち味だという印象のきっかけとなった楽曲、ギターの轟音が印象的なイントロで始まる「沈めてくれたら」では、ギターの鋭さが増しつつも歌を聴かせるパートが同等の強度を持っており、先述の越雲のMCを裏付けるような、普遍性のある強さが感じられた。

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今の彼らには借りてきたようなマイブームのような強みではなく、確固たる軸のような強みが生まれている。

それは、「FLOWERS」の制作の中で彼らが身につけた演出力・サウンドのデザイン力という武器、今ツアーの中で培ったメンバー・スタッフへの信頼から成るものだろう。
ようやくpollyとしての軸を見つけた彼らは、新たなリスナー、まだ見ぬ人々との出会いを、自分たちの未来を、楽しみにできているのではないだろうか。

今までのライブでの「東京」は、何者にもなれていない今の自分に対する悲哀。つまり現在地の歌として響かせていたが、今回の「東京」は、過去に点在する不甲斐無い自分に花を贈り、今の自分の強さとして昇華するような、そんな印象を受けた。
今に至る自身を形成した過去を断ち切ることは難しくて、でも未来を生きるためには過去に捉われている余裕はない。
前を向くための強さを持った今のpollyを象徴する精神性を共に感じられる楽曲だった。
このライブで聴けてよかったと心から思う。

ライブでの定番曲となっている「バースデイ」「狂おしい」のゴシックな激しさのもたらすカオスの渦の勢いにフロアの熱量が一気に高まっていた。
歌を聴かせる力の進化と共に、こういった激しい楽曲の魅力も同時に引き出しているのは面白い。
メロディの良さや他に迎合しない精神性など、根本的な感性の一貫性は強いが、部分的には飽き性なバンドなのかなと思っているので、是非これからも飽きっぽく歌も激しさも切なさも色々追求して、いろんな楽曲をpollyとして生み出していってほしい。

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観客の顔を見て「今日みんないい顔してるんで、またライブハウスで会えたらいいな」とMCで語った越雲、それに頷く飯村、須藤、高岩はとてもいい顔をしていた。

「Starlight Starlight」を終え、アンコールに選ばれた曲は「Hymn」。
何度聴いても、祝福のような曲だなと思う。
激しく盛り上がるような曲やしっとりと泣ける曲ではなく、こういった大きいビートで歩みを踏みしめるような曲をアンコールに据えることのできるバンドはそうそういない。
披露された数々の楽曲ひとつひとつが意味の込められた花のようで、いつの間にかできあがった大きな花束を抱きしめるように「Hymn」を聴いていた。

演奏を終え、彼らが舞台袖にはけてもなお美しい花の添えられたステージを一通り眺めた後、今の自分を愛していいような気持ちでライブハウスを後にした。
きっとフロアにいた誰もが、ステージにいた彼らもが、そんな気持ちになっていたライブだったと思う。

花は、そこに飾るだけではなく水を替え続けなければならない。
それでもいつか枯れてしまう。また咲かせなければならない。
pollyが新たな花をまた咲かせて届けてくれることを、信じている。信じられる。信じたくなってしまう。
そんなステージだったと思う。


polly Release Tour「FLOWERS」Final One Man

2020.01.31(fri) LIVE HOUSE FEVER

-SET LIST-

1.泣きたくなるような

2.Plastic

3.同じ花を見つめながら

4.生活

5.花束

6.美しい

7.遠く

8.沈めてくれたら

9.知らない

10.東京

11.Wednesday

12.哀余る

13.不在

14.刹那

15.触れて

16.バースデイ

17.狂おしい

18.Starlight Starlight

en.Hymn

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